金融技術を事業経営に積極的に活用していこうとする動きが活発化してきた。それは、ストック・オプションや天候デリバティブなど「新商品」を事業に活用するものだけでなく、各種契約条項や設備投資案件を金融工学的に分析したり、事業機会そのものをオプションとして捉えて経営を行ったり、といったより広い意味での事業と金融の融合である。
リアル・オプションは、ひろく意思決定にオプション価格理論を応用しようとするもので、設備投資評価においては30年に一度の革新とも言われている。数年前から実務に利用されはじめたリアル・オプションであるが、実際に実務に利用するためには多くの留意点が存在する。
今回は、理論を実務に適用する方法に重点をおき、分析のプロトタイプを示しながら、今なお発展を続けるリアル・オプション分析について分かり易く説明する。特に、質問がよく出るポイント、混乱しがちなポイントについて、丁寧に説明する。
1.リアル・オプション概論
(1) リアル・オプションとは何か
(2) 代表的なリアル・オプション
2.オプションの評価
(1) やさしいオプション価格理論
(2) 価値評価の例
3.リアル・オプション分析の特徴
(1) IRR、DCF、EVAなどと比較して
(2) 戦略論、経営判断との関係
4.リアル・オプション分析のモデルケース
(1) 分析の枠組み
(2) プロトタイプに沿った分析
(3) 利用するデータ
5.まとめ
(1) 具体的にどのような判断が導かれるか
(2) 最近のトピックス
(3) 将来への展望
[講師略歴]東京大学工学部卒業、MIT修士課程修了(不動産金融・経済)。1992年に日本開発銀行(現日本政策投資銀行)に入行。現在カリフォルニア大学バークレー校在籍(金融・不動産。フルブライト留学生)。日本不動産金融工学学会理事、経済産業省リアル・オプション研究会委員、東京大学・明海大学大学院特別講師など歴任。論文に"Effects
of Uncertainty on the Investment Decision(MIT教科書に採用)"、「商業用不動産の資産需要と供給の決定要因」など、出版物にリアル・オプション(共訳、東洋経済新報社)、投資決定理論とリアル・オプション(共訳、エコノミスト社)など。他講演多数。